梨状筋とは

お尻の奥深くにある「梨状筋」という筋肉。骨盤や股関節の周辺に不調や痛みがある人は、原因を調べていく中で名前を知る機会があるかもしれませんが、具体的にどのような筋肉か知らない人も多いのではないでしょうか。
ここでは、梨状筋について詳しく解説します。
梨状筋は深層外旋六筋の一つ

梨状筋は、お尻のインナーマッスルである「深層外旋六筋」の一つです。
深層外旋六筋は以下の6つの筋肉で構成され、骨盤と大腿骨を結び、股関節を安定させたり股関節を外旋(外側に回旋)させたりする役割を担っています。
- 梨状筋
- 内閉鎖筋
- 上双子筋
- 下双子筋
- 大腿方形筋
- 外閉鎖筋
これらの筋肉が、さまざまな角度から大腿骨の骨頭(大腿骨の先端の丸い部分)を骨盤の臼蓋(大腿骨の骨頭を収めるお椀状の受け皿)に引き付け、安定性を保っています。
深層外旋六筋の弱まりは、股関節周りが不安定になる原因の一つです。
深層外旋六筋が不安定だと、立っているときや歩いているときにグラグラしてしまうため、中臀筋や小臀筋などのお尻の表側にある筋肉がカバーしてくれます。しかし、中臀筋や小臀筋への負担が大きくなり過ぎると、股関節周辺の痛みにつながる可能性があります。
梨状筋の役割
梨状筋は、深層外旋六筋の中でもっとも大きいといわれる筋肉です。骨盤から股関節の外側までつながっていて、太ももの大腿骨と骨盤を結んでいます。
梨状筋の主な役割は、股関節を外側にねじる動きや股関節の角度によって内側にねじる動きですが、歩いたり走ったり片足立ちする際に股関節を安定させたり、体幹と下肢をつないだり、足裏からの衝撃を股関節で吸収する役割も担っています。
梨状筋は骨盤の安定化に重要
梨状筋は、骨盤の安定化にも重要な筋肉です。
梨状筋の起始(スタート)は仙骨であり、中臀筋や小臀筋、梨状筋以外の深層外旋六筋、内転筋群の一つである恥骨筋などと力を合わせ、大腿骨の骨頭を骨盤の臼蓋に押し込んでいます。
大腿骨の骨頭と骨盤の臼蓋が正しくはまる方向に働くのは梨状筋だけです。
梨状筋が仙骨とつながっていなければ骨盤を安定化させられませんが、梨状筋は筋肉が小さいため、ピンポイントでアプローチするよりも、一緒に働いている筋肉をケアして梨状筋をサポートする方が効率的だといえます。
梨状筋が硬くなるとどうなる?

梨状筋は、長時間のデスクワークや車の運転など、日常生活の中で長時間同じ姿勢でいたり、激しい運動をしたりして繰り返し負担がかかった場合や運動不足の場合、股関節の異常などによって硬くなります。
梨状筋が硬くなると、骨盤や股関節周りの不調や痛みの原因になることがわかっていますが、具体的にはどのような影響が出るのでしょうか。
ここでは、梨状筋が硬くなることで体に起こる影響について紹介します。
骨盤の左右差が出る可能性がある
梨状筋は左右の大腿骨と仙骨をそれぞれ結んでいるため、左右の骨盤で硬さが異なる場合は仙骨がどちらかに引っ張られて、骨盤が本来あるべき位置からずれてしまい、左右差が生じることがあります。
骨盤が左右に傾いていると、腰痛や肩こり、膝の痛みなどの原因になる可能性もあるため、梨状筋が硬くならないよう早めに対処しておきましょう。
梨状筋症候群になる可能性がある
梨状筋症候群とは、梨状筋の近くを通る「坐骨神経(坐骨を通って梨状筋を抜け、足へ向かう末梢神経)」が、硬くなった梨状筋に圧迫されることで起こる疾患。坐骨神経痛の原因の一つとなるため注意が必要です。
痛みの感じ方は人それぞれ異なり、お尻や脚に焼けるような痛みや「ビリビリ」「ピリピリ」「ジンジン」としたしびれの症状があります。
また、梨状筋症候群は、スネやふくらはぎの神経にも関わる疾患です。
圧迫されると足の大部分に悪影響を及ぼし、ひどくなると日常生活に支障をきたす可能性もあります。
長時間座っていたり股関節を動かしたりなどの行動で悪化しやすく、同じ姿勢を続けているとさらに症状が進んでしまう可能性があるため、日頃からストレッチを行って坐骨神経への圧迫を軽減するよう努めることが大切です。
梨状筋は骨盤底筋とも密接に関係

梨状筋と骨盤底筋は、どちらも骨盤の周辺にあり、体の安定性や機能に密接にかかわる重要な筋肉です。
骨盤底筋は骨盤の底で内臓をハンモックのように支え、排泄のコントロールや姿勢を安定させる役割を担っているため、筋力が弱まると内臓が下垂したり頻尿や尿漏れなどの排泄障害を起こしたり、姿勢が悪くなったりする可能性があります。
また、骨盤底筋は梨状筋の起始である仙骨ともつながっていて、体幹や股関節周辺の安定性を強化しています。
骨盤底筋が弱ってしまうと、梨状筋にも同じように負担がかかり、緊張状態に。すると、緊張状態になった梨状筋に坐骨神経が圧迫され、痛みやしびれなどの症状につながる可能性があります。
反対に、梨状筋が硬くなると骨盤まわりのバランスが崩れ、骨盤底筋が適切に機能しなくなる可能性もあるため、梨状筋だけでなく骨盤底筋のケアも行い、骨盤のバランスを保つことが大切です。
梨状筋症候群セルフチェック

日常生活に支障をきたしたり、坐骨神経痛の原因になったりする恐れもある梨状筋症候群。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、坐骨神経痛を引き起こすその他の疾患と間違えやすいのが特徴です。
医療機関で治療を受けてもなかなか治らない場合は、梨状筋症候群の可能性も考えられるため、まずはセルフチェックを行ってみるのもよいでしょう。
以下は、梨状筋症候群のセルフチェック方法です。
- 仰向けに横になる
- 痛みやしびれのある側の足を膝を曲げた状態でもち上げる
- もち上げた足を反対側に倒し、膝の外側を地面に向けて伸ばす
- お尻が伸びたときに痛みがある場合は梨状筋症候群の可能性がある
上記のセルフチェックは、理学療法士が現場で行っている「K・ボンネットテスト」というものです。
お尻が伸びたとき、お尻から太ももにかけて、放散痛(広がるような痛み)がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
毎日の習慣に!自宅でできる梨状筋ストレッチ3選

梨状筋の筋トレを行って筋力を強化することも重要ですが、筋肉が固くなると梨状筋症候群のリスクが高まったり骨盤のバランスが崩れたりする可能性もあるため、筋肉の柔軟性を取り戻すことが大切。
梨状筋はお尻の奥深くにあるインナーマッスルです。直接ほぐしたり伸ばしたりすることが難しいため、適切なストレッチの方法を知っておきましょう。
ここでは梨状筋ストレッチの方法を3つ紹介します。
なお、ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行うことが重要です。強い痛みを感じたときは、すぐに中止してください。
床に寝転んで「股関節ゆるめ」

梨状筋は股関節の動きだけでなく、足の裏の感覚や脚の踏み出しにも関係する筋肉です。ゆっくりとストレッチをすることで股関節の柔軟性が上がり、腰痛の緩和が期待できます。
以下は、床に寝転んで行う「股関節ゆるめ」のやり方です。
- うつ伏せになり、片脚を上げて膝を90度に曲げる
- 股関節のインナーマッスルに効かせるイメージで、かかとを手で持って足のつけ根から大きく外へ開く
- この姿勢を15秒間キープする
- 反対側も同様に行う
姿勢をキープする際、腰を反らさないように注意しましょう。股関節を床にベタッと密着させ、さらに脚を開くと効果がアップします。
股関節ストレッチ

可動域の大きい股関節ですが、柔軟性が失われると脚全体の筋肉が硬くなって動きも悪くなります。
そこで取り入れたいのが「股関節ストレッチ」。短い時間でも、毎日続けることで股関節の柔軟性を取り戻し、腰の不調を改善できる可能性があります。
以下は、股関節ストレッチのやり方です。
- 仰向けに寝転がる
- 顎を引いて右足はまっすぐに伸ばし、左脚の膝をかかえて足のつけ根がつまる感じの位置で30秒キープする
- 左のかかとを右の太ももの膝上辺りにかけ、右の太ももをお腹の方に引き寄せる
- 左のお尻の下から太もも後方への移行部辺りを意識しながら30秒キープする
- 反対側も同じ動きをする
梨状筋症候群を予防するためにも、股関節ストレッチは大切。寝ながら行えるものなら、自宅でのリラックスタイムに気軽にできるためおすすめです。
お尻、ももの外側のストレッチ

硬くなると坐骨神経を圧迫して、痛みやしびれなどの原因になるお尻の筋肉。お尻やももの外側の筋肉をストレッチでほぐすことで、坐骨神経への圧迫を軽減できる可能性があります。
以下は、お尻、ももの外側のストレッチのやり方です。
- 床に座って伸ばしたい方の脚を体の前で外側に開き、膝を倒す
- 背中が丸まらないように注意しながら、股関節から体を前に倒していく
- 30秒〜1分間、そのままの姿勢をキープする
ヨガの「鳩のポーズ」でも行えるこのストレッチは、お尻の柔軟性を高め、坐骨神経への圧迫を軽減するため、梨状筋症候群を改善する効果が期待できます。
梨状筋と連結している「骨盤底筋」のサポートインナーもおすすめ
梨状筋と連結し、体幹や股関節まわりの安定性を強化している「骨盤底筋」。
骨盤底筋の衰えによって筋力が弱まると、骨盤がゆがんで梨状筋に負担がかかり、梨状筋症候群になる可能性が高まってしまいます。そのため、日頃から梨状筋のストレッチだけでなく、骨盤底筋の意識付けをしておくことが大切です。
特に50代以降の女性は、女性ホルモンの急激な変化に伴って骨盤底筋の筋力低下も加速します。
自己流のトレーニングでも骨盤底筋を鍛えられますが、そもそも骨盤底筋がどこにあるのか、締める感覚がわからない人も多いのが現状です。
そこでおすすめなのが「ハルメク ヘルスプラス・骨盤底筋&ヒップサポートショーツ」。
骨盤まわりを左右から心地よく引き締め、2重のハンモック状になったクロッチ部分が、適度な圧をかけながら骨盤底筋をもち上げるようにサポート。はくだけで骨盤底筋に意識を向きやすくしてくれます。
さらに、おなか部分とお尻の下からサイドにかけて貼ったサポート生地が、気になるおなかとたるんだお尻をサポートしてくれるため、パンツスタイルもすっきり決まります。


梨状筋と周辺の筋肉をケアして痛み・しびれを予防しよう!
梨状筋はお尻の奥深くにあり、股関節を外側にねじる動きや股関節の角度によって内側にねじる動きや、骨盤を安定させる役割を担っています。
筋肉自体が薄く、筋繊維の数も少ないうえに負荷がかかりやすく緊張しやすいため、日頃から梨状筋のストレッチを行って柔軟性を保つとともに、周辺の筋肉もケアしておくことが大切です。
ぜひ、今回紹介したストレッチを取り入れて、梨状筋が原因で起こる痛みやしびれの予防に役立ててください。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
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